記憶が静かに息づく余韻の住まい「田井の家Ⅱ」 2024 TECTURE AWARD 2024 NCN賞
祖父母から引き継いだ敷地に家族3人と猫の暮らす住宅。
記憶を引き継ぐ空間のある緑豊かな庭と暮らしを考えた。
| 躯体性能 | 耐震等級3(許容応力度計算による構造計算) |
|---|---|
| 外皮性能 | Ua値 0.37 C値 0.6 |
| 取得認定等 | 認定長期優良住宅取得 住宅性能表示(設計評価 取得) |
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屋根形状と樹木の高さは、山の稜線に合うように設計を行った。

主室から直接出られるようにデッキを設えている。
軒を低く抑えることでプロポーションを整えています。



玄関ホールと一体となった和室。
和室は、お茶も出来るように茶室の設えとしている。
また、記憶を引き継げるように、天井板・床柱・床板・枠材は旧家の材を再利用している。



和室(茶室)のアプローチ
茶会の際には、こちらから茶室へ。

廊下から主室を見ると開口部からの美しい光が入っている様子が見れる。
廊下と続く天井の高さは、2,000mmと低く抑えた。

主室から庭の眺め。
列柱が光の陰影をつくり、空間に変化を与える。

主室の天井は、勾配天井となっており、低いところで2,000mm高いところで3,200mmとしている。

この住宅が建つ敷地は、奥様の祖父母が暮らしていた場所である。敷地には母屋と納屋が残されていたが、傷みが激しく、家族三人と猫が暮らす新たな住まいとして建て替えることとなった。
クライアントが求めたのは、緑豊かな庭のある暮らしと、旧家の記憶を受け継ぐことのできる住まいであった。
平面計画は旧家の間取りを参考とし、建物の配置やアプローチもかつての暮らしの痕跡をなぞるように計画した。ゆったりとした敷地を活かした平屋建てとし、温熱環境にも配慮した構成としている。
家族が集う主室は、三間角の大らかな空間とした。南に大きく開いた開口部からは光が差し込み、軒によって季節ごとの日射を調整している。主室の南側は、かつて縁側があった場所に重なる。天井を抑えた縁側のような場所から、高さのある主室へと空間が連続し、光は天井を伝いながら次第に暗さを伴うグラデーションへと変化していく。
時間の経過とともに変化する光の表情は、空間に穏やかな奥行きを与え、そこに居る人の記憶に静かに残り続ける。
玄関から続く和室は、襖を開放すると玄関ホールの一部となり、また奥様が幼少期から親しんできた茶道のための茶室ともなるよう設えた。この和室には旧家の天井材、床柱、床板、枠材の一部を再利用している。
茶をもてなす際には、東側の石畳を通って直接和室へ向かう。庭を感じながら和室へ至ることで、日常から少し離れ、気持ちを整えながら茶席へ向かうことができる。
庭には既存のみかんや柿、ゆずを残し、背後の山へと連続するよう植栽を配置した。屋根の形状や樹木の高さも山の稜線との関係を意識し、この土地に元からあった風景の一部となるよう計画している。
私にとって「余韻」とは、空間を体験した後も静かに残り続ける感覚である。
ここでは、光の移ろい、受け継がれた素材、庭や山並みとの関係が重なり合い、日々の暮らしの中に静かな余韻を残している。
それは目に見えるものではなく、ふとした瞬間に思い出される居心地や記憶のようなものである。
木造平屋建て(SE構法)
延べ床面積:127.44㎡(38.55坪)
建築設計:藤原昌彦+バウムスタイルアーキテクト一級建築士事務所
構造設計:株式会社エヌシーエヌ
設計期間:2022年 8月~2024年 2月
施工期間:2023年 9月~2024年10月
写 真:笹倉洋平/笹の倉舎
