古民家を訪れるたびに思うことがあります。
昔の人は、限られた材料だけで、驚くほど心地よい住まいをつくっていたということです。
茅葺屋根は、雨を防ぐだけではありません。
土壁も、ただ壁として存在しているわけではありません。
一つの素材に、いくつもの役割を持たせながら、風や光、湿気や熱と上手に付き合っていました。
そこには、自然に逆らうのではなく、自然を受け入れながら暮らす知恵があります。
現代の住まいは、性能も快適性も大きく向上しました。
それでも古民家に立つと、どこか懐かしく、心が落ち着くのはなぜでしょう。
もしかすると、私たちは便利さと引き換えに、暮らしの中の大切な何かを少しずつ忘れてきたのかもしれません。

だから私は、古民家をそのまま真似したいとは思いません。
建築によって忘れてしまったものを、建築で取り戻したい。
そんな住まいを、これからも考え続けたいと思っています。
藤原昌彦