皆さんは、こんな経験はないだろうか。
何でもないような場所で話し込んだり、
ふと立ち寄った場所なのに、なぜだか長居をしてしまうことがある。
私にも、理由はよく分からないが、なかなか立ち去れない場所がある。
窓辺の少し腰掛けられる場所。
緑を眺めながら過ごせる食卓。
庭の木々が見える縁側のような場所。
特別な用事があるわけではない。
それでも、なぜかそこに居たくなる。

効率が求められる時代である。
住まいにも無駄のない動線や合理性が求められる。
もちろん、それらは大切なことである。
けれど私は、この一見すると無駄にも思える時間や居場所こそが、暮らしを豊かにしているのではないかと思う。
少し立ち止まる。
外を眺める。
風を感じる。
何もせずに過ごす。
そんな時間の中で、人は心を整えたり、余韻に浸ったりしているのかもしれない。
住まいは、ただ用を足すための器ではない。
用事がなくても居たくなる場所。
なかなか立ち去れない場所。
私は、そんな「去り難い場所」のある住まいをつくりたいと思っている。
藤原昌彦