日々の中で、「気持ちの良い人だな」と感じる方がいます。
そうした方に共通しているのは、特別な何かではなく、ごく当たり前の所作の美しさです。

挨拶が自然で、言葉に無理がない。
身だしなみも、華やかさではなく、きちんと整えられている。
高価なものを身につけているかどうかではなく、清潔であること、整っていること。
そこに、その人の在り方がにじみ出ているように感じます。
空間も同じではないでしょうか。
良い家具や素材は、確かに空間の質を高めます。
しかしそれ以上に、整えられていること、秩序が保たれていることが、空間の印象を決定づけます。
物が過不足なく置かれ、掃除が行き届いている。
使われたものが、元の場所に静かに戻されている。
そうした状態は、派手さはなくとも、確かな心地よさを持っています。
それは設計以前の、暮らしの姿勢の問題でもあります。
私自身、特別なことをしているわけではありませんが、
朝起きたときにベッドを軽く整え、パジャマを畳み、靴を揃える。
そうした小さな行為を、日々の中で繰り返しています。
ほんの些細なことですが、その積み重ねによって、空間の状態は確実に変わっていきます。
整えられた状態から一日を始めることで、気持ちも自然と整っていくのを感じます。

整えるという行為は、暮らしを丁寧に扱うことに他なりません。
そしてその丁寧さが、やがて空間にあらわれ、空気の質を変えていきます。
美しい空間は、特別な操作によって生まれるものではなく、
日々の小さな積み重ねの中で育まれていくものだと思います。
気持ちの良い人がいるところには、気持ちの良い空間があり、
気持ちの良い空間は、また人の在り方を整えていく。
その静かな循環を、大切にしていきたいと感じています。
藤原昌彦