人は、動くものに目を向ける。

藤原の日記

風に揺れる木々。
流れる雲。
雨粒。
鳥が飛ぶ姿。

人は本来、そうした動きに自然と目を向ける生き物なのだと思う。

昔の住まいでは、窓の向こうに庭があり、空があり、風景があった。
だから、ふとした瞬間に外へ視線が向かっていた。

その後、暮らしの中心にテレビが置かれるようになり、家族の視線は室内へ集まるようになった。

そして今、私たちの視線は、一人ひとりが手の中のスマートフォンへ向けている。

もちろん、それ自体が良い悪いという話ではない。

ただ、風に揺れる木々や、雲の流れを眺める時間は、以前より少なくなったように感じる。

だから私は、住宅にはもう一度、外へ視線が向かうきっかけをつくりたい。

庭の木が風に揺れる窓。
雨を眺められる軒先。
夕焼けに気づく小さな居場所。

そうした何気ない情景が、暮らしに静かな豊かさを取り戻してくれるのではないだろうか。

藤原昌彦