雁行する平面と離れを持つ平屋建ての二世帯住宅 「田中の家」 2025

ご夫婦と妹との3人が住まう二世帯住宅。
お互いの距離感と穏やかな暮らしを考えた住宅です。

躯体性能:耐震等級3(許容応力度計算による構造計算) ※構造についてはこちらへ
外皮性能:Ua値 0.39 C値 0.7 ※温熱環境についてはこちらへ
認定長期優良住宅取得

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周辺環境へ馴染む様に杉板貼りの外観
アプローチは、スロープとして将来の車いすとなった場合でも対応できるようにしている。

足の不自由な妹さんの住居エリアへは、玄関から直線的に進める様にしており、手摺や車いすへの配慮を行った。
玄関・和室(茶室・仏間)は両世帯の共有の場となり、集まれる場としている。

普段の和室は仏間として使用し、仏壇置き場の襖を閉じることで、奥様が趣味で行われている茶室となる。

ご夫婦の主室(台所・食堂・居間)
ご夫婦の柔らかい大らかな雰囲気・人柄から天井を板貼のR天井とした。

主室の一画に設けた書斎コーナー・薪ストーブコーナー
廊下に面する建具は、旧家で使用していた建具を再利用した。

主室から中庭を望む
この庭の先に公園があり、そちらへ視線が向かうように開口を設けて、公園とのつながりを意識して屋外空間を設計した。

トイレは、建物の中央部に配置を行い、トップライトからの明りで満たされる空間とした。
また、トイレのハイサイドをガラスとして、光が廊下へも廻る様に設計を行った。

屋外空間は、ウッドデッキを繋げて、お互いの世帯を行き来出来るようにしている。
また、離れの書斎もデッキにより繋がっている。

離れ(書斎)
籠れる書斎として、離れとして計画を行った。

雁行する平面と離れを持つ平屋建ての二世帯住宅 「田中の家」

幹線道路にほど近く、住宅が建ち並ぶ岡山市内の一角。

クライアントは以前よりこの周辺に暮らしており、南側に位置する公園は子供たちとの思い出の場でもある。

50代のご夫婦は、子育てを終え、今後は障がいを持つ妹との3人暮らしを見据えた二世帯住宅を望まれた。比較的ゆとりある敷地条件を活かし、建物は平屋とし、それぞれのプライバシーを尊重しながらも、気配を感じ合える距離感を意識した構成とした。具体的には、玄関と和室(仏間・茶室)を共有の場所として配置して、この場所からお互いのスペースを雁行しながら配置した。雁行させることにより、南側の公園に視線の抜けと繋がりを持つ庭が確保でき、双方の居室からこの庭を眺められるように計画を行った。また、隣地の集合住宅からの視線の配慮として、ご主人の書斎スペースを離れとして計画を行い、内部と外部が呼応するような空間的関係をつくり出している。雁行平面と離れの存在により、屋外と屋内とが連続し穏やかな広がりを持った居住空間が生まれた。

外観は、連続していく屋根をイメージし寄棟とし、外壁には杉板を使用した。杉材は、時間の経過とともに表情を変え、銀白色へと落ち着いていく。その経年変化が、この街並みに静かに溶け込んでいくことを意図している。

中庭を介して生まれる穏やかな距離感と、視線と風の抜ける構成。

この住まいが、家族にとって心地よく、豊かな時間が流れる場となることを願っている。

木造平屋建て(SE構法)
延べ床面積:142.19㎡(43.01坪) 離れ:9.79㎡(2.96坪) ガレージ:19.11㎡(5.78坪) 合計:171.09㎡(51.75坪)
建築設計:藤原昌彦+バウムスタイルアーキテクト一級建築士事務所
構造設計:株式会社エヌシーエヌ
設計期間:2023年  4月~2024年 10月
施工期間:2024年  4月~2025年   4月
写  真:笹倉洋平/笹の倉舎